2010 年 8 月

進学相談会 雑感

というわけでもう1週間以上経ちますが、多摩美術大学・武蔵野美術大学の進学相談会に行ってきました。

近年は毎年足を運んでいますが、どちらの大学も年々力が入ってきていますね。作品集を無料で配布したり、オリジナルグッズをプレゼントしたりと、まるで住宅展示場みたいなサービスをしています。スタッフの皆さんも職員や学生問わずみんな親切で、やる気を感じます。ホスピタリティってやつでしょうか。

それはやはり少子化と不況の影響で受験者が少なくなっており、美大同士で受験者の奪い合いが激化していることが関係あるのでしょう。各大学の相談会への力の入れように必死さが垣間みれますし、必死でなければ生き残れないということでもあります。

10年後、美術大学も美術予備校もいまのままではないと思っています。
定員割れをする美大は増えるでしょう。それは美大進学が容易になるということで、その結果として美術予備校は淘汰が進むでしょう。

美術大学を巡る状況は、業界再編中というような印象です。
いまは推薦制度や専攻学科の数などがあまりに多様化し複雑になっています。この流れはあと数年続くでしょうが、その後は美大受験がもっとシンプルになっていくような気がします。たとえば多摩美術大学・武蔵野美術大学も東京造形大学のように共通実技になっていくとか…。

多摩美大のデザイン科でいえば、情報デザイン学科の両コースとプロダクトデザイン学科は、あえてグラフィックデザイン学科の入試問題に合わせているようです。それは、一番人気のグラフィックデザイン学科に入試問題を近くすることによって、受験生は対策がしやすくなり、併願受験をする受験者(=つまり志願者数)が多くなるからです。受験者が減少する現在、これは当然の流れかもしれません。

ただし、大学も受験者にもメリットがあるようですが、それには問題もあるようです。
昨年度から入試問題をグラフィックデザイン学科のように変更したプロダクトデザイン学科は、昨年の説明会では「プロダクトデザイン学科はなんでもできるから誰でもどんどん受験してください」というスタンスだったのが、今年の説明会では「何をやりたいか、どんなデザインをしたいのかハッキリさせてから来てください」というように変わっていました。

目的意識がぼやけたまま入学してしまう学生が多かったのでしょう。いままでは少なからずプロダクトデザインに興味を持った学生が入学していたのが、「併願受験をしたらなんとなく受かってしまった」学生が少なからずいたことを想像させます。



それと、会場を歩いていて思ったのは親子連れの多さです。親子で説明会・進学相談会にくる時代なんですね。親子で受験参考作品の感想を言い合ったり、教授に質問している。いまは保護者の方も非常に受験について詳しくなっているし、子供の受験を自分のことのように捉えている。

大学も予備校も、保護者の信頼を得るところから始めなければならない。設備の環境、教員の資質、入学者や就職の実績…適当にやっていたら未来がありません。学校・受験生・家庭、その連携を大切にした大学や予備校こそが生き残っていく時代になるのではないでしょうか。

武蔵野美術大学進学相談会

昨日に引き続き、今日は武蔵野美術大学の進学相談会に行ってきた。
多摩美術大学に比べて武蔵野美術大学は学生スタッフが多く参加しており、よりアットホームな印象でした。やはり外部の人が訪れるような学校行事(進学相談会、オープンキャンパス、大学祭など…)は武蔵野美術大学のほうがしっかりしていると思います。

ムサビの偉いところはちゃんと学食がやっていること。多摩美もイイオ食堂はやっていたのかな?でも会場的にあっち方面まで行く人はあまりいないしねえ…。今年からなので模索中とはいえ、炎天下の中多摩美の八王子キャンパスを歩かされるのはキツい。

あとはムサビは新図書館も内部を特別に開放していて、そういうところも親切でしたね。(図書館は外装はすでに汚かったけど、内部は多摩美に負けないくらい、いや多摩美以上にドーンとしていて格好よかった。)

ま、 広報活動は多摩美の方が上手いと思いますけど。ムサビの発行するパンフ類は総じてテキスト主体で読む気が起きない。

武蔵野美術大学の教授は聞けば相当しっかり教えてくれますね。みんな受験に詳しいし。視覚伝達、基礎デ、デザイン情報、いろいろ受験に関する情報をゲットできました。やはり試験にピントを合わせるには教授としっかり話すことですね。教えるこちら側もモチベーションあがる。逆に質問してくる教授もいて、大学と予備校の情報交換会って感じ。

ムサビでアンケートに答えたら、オリジナル3色消しゴム(?)とシールくれた。よくわからないけど地味にうれしい。



あとこれは昨日の多摩美でもらったクロッキーブック。

オリジナル使用。


1ページ目にはメッセージが印刷されている。「この世界をもっともっと自由に」….ちょっとウザい!

多摩美術大学進学相談会



多摩美術大学の進学相談会に行ってきた。
これまでは上野毛校舎だったのが、今年は八王子校舎でおこなわれました。
個人的には八王子(ていうか橋本)校舎のほうが近いしキレイだから好きだけど、東京の東のほうに住んでる人には小旅行的なものがありますね。

さて進学相談会ですが受験生だけではなく予備校関係者にとっても非常に重要です。
各学科のブースで入試の傾向や昨年度の問題の手応えを聞いて回り、今年度の受験へ向けてピントを合わせていきます。授業では厳しい教授たちも、この日ばかりは聞けばとても親切に答えてくれます。受験裏話的なものも聞けて面白いです。

デザイナーとして活躍している教授たちが受験生に対して熱心に入試の説明しているのは胸が熱くなります。でも受験生があまりいないとき、パイプ椅子に座って手持ち無沙汰になっている教授の光景はちょいシュールですね。「偉い人なのに人が集まってない!」って。そんなときの居心地の悪さがにじみ出た教授陣の顔からは、彼らもひとりの人間であるということに気づかされます。

入試作品は現物をみると感動しますね。やっぱり上手いから。入試優秀作品が掲載されている資料が無料で配布されているけれど、やっぱり印刷と本物とじゃ全く違います。本当に違います。本を信じすぎるの良くない。変なギャラリー行くよりかはよっぽど感動しますよ、マジで。



大ホールでは各学科15分間の受験概要を説明しています。自分が聞いた中でいちばん上手だったのは情報デザイン学科芸術コースの久保田さんでした。受験生が知りたいと思われる内容を中心に淀みなくプレゼンしていたように思う。

逆に個人的にアレだったのがプロダクトデザイン学科。手の込んだプレゼンだったけど、未来について語り過ぎで受験の内容については全く話さなかった。配布されたプリントには受験内容についての話って書いてあった気がするので、これはどうかなと。音量調整や手際も含めてプロダクトがグダグダのプレゼンをしていて珍しいなと思った。

グラフィックデザイン学科は例年どうり。聞けば多少モチベーションはあがるし、聞かなくてもまあいいかと思えるような内容。今回は秋山孝がデッサンも平面も説明していた。佐藤晃一からは毎年「はい名言でました〜」っていうのが聞けるから期待していたんだけど、今回はブースにもいなかったので欠席ですかね?それとも持ち回りで2日目に登場でしょうか。

デザインコースは昨年の楠先生のプレゼンが全く良くなくてガッカリしたんだけど、今年は須永先生だった。須永先生は言葉を選びながら喋るのでちょっとテンポ悪かった。もっと受験内容のプレゼンに向いている先生がいると思うんだけど、なんでここで須永先生が登場したのかちょっと疑問に思った。


アンケートに答えて帰ると多摩美別注マルマンの激レア(?)クロッキー帳が貰える。麦茶も無料で貰えるし、受験者を増やそうと努力している大学の気合いたるやパないです。

森美術館「ネイチャー・センス」



森美術館で「ネイチャー・センス展」を見てきた。

Twitterなどで展覧会の評判や情報は否応なしに流れてくる時代ですが、「ネイチャー・センス展」についての情報はあんまり流れてきませんでしたね。まあ自分が無意識にスルーしていただけかもしれませんが。

「ネイチャー・センス展」は吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆の3人により大規模なインスタレーション展。私は吉岡徳仁さん以外は初めて聞きました…。展覧会のウェブサイトをみてもピンとこないので、どんなもんだろ?と思って軽い気持ちで行ってきたんですが、とても面白い展示でした。

細かい作品についての説明は割愛しますが、アートとデザインの違いってなんだろうって思いました。吉岡徳仁ってデザイナーじゃないですか。そういう人の作品と、篠田太郎や栗林隆のようなアーティストと呼ばれる人の作品は何が違うのか?

個人的にはあまり違わないと思いましたね。どれも同じように興味深い。アートとデザインの垣根がなくなったっていうよりも、アートの定義がデザインに近づいてきているような気もします。もはやみんながアートといっているものは、デザインなのかもしれません。なんの根拠もいえませんが。


あ、会場が白っぽいので、白いズボンや淡い色のシャツを着ていくと会場と一体になれるかと思います(なってどうする)。

それと、子供も楽しめるような作品がいくつかあって良かったです。子供向けということではなくて、大人でも子供でも「わあっ」ってなるような作品ってことです。視覚と身体で楽しめます。この展覧会、写真撮影が可能なんですが、男の子と女の子が吉岡徳仁の作品の前でピースをしていて、お父さんが記念撮影をしていたんですね。それをみて、ああ、いい光景だなと。こういう光景が美術館で増えるといいなって。


ところで夏まっさかり、券売所は大にぎわいでした。子供がたくさんいたんので「3分の2は恐竜展目当てのお客さんだろうな…」と思っていたんですが、実際会場に入るとたぶんあそこに並んでいた5分の4くらいの人は恐竜展だったんじゃねーの。というくらい空いていてゆったりみることができました。あのくらいのスペースにあの作品の数だと体力的にも楽なので助かります。オススメの展覧会です。

町田市国際版画美術館、再訪

中里斉さんの弟である中里威さんからコメントを頂いたので転載いたします。





斉の弟です。
斉をしのぶ会のお知らせをします。
謹んでお知らせいたします。

去る7月17日午後11時31分、夫 中里 斉はニューヨーク市 の病院にて急逝致しました。

僅か1ヶ月ほど前には帰国し、版画展のオープンニン グを皆様とともに迎えた後、ニューヨークに戻り、再度日本へ向かおうとする間の 出来事でした。彼はアトリエでよく使っていて使い慣れているはずの梯子から転落し、頭を強打した結果、脳内出血が原因で帰らぬ人となりました。

何という人生の巡り合わせでしょうか。彼は7月下旬 に帰国し、展覧会の最後を飾るプレゼンテーションを行うばかりでしたが、それは永遠に果たせないことになってしまいました。しかし、皆様と親しく語り合いたいという故人の願いを叶えるべく、8月7日(土)に桜美林学園で皆様とともに中里斉を偲ぶひとときを 持ちたいと思います。

皆様方には是非ともご参会いただきますよう心からお願い申し上げます。
なおその際はどうぞ平服でお越しください。お花、香典等のお心遣いは遠慮申し上げます。
                        
            故中里斉妻、竹田すみ子

                   記

「中里斉を偲ぶ夏の日」

場 所 : 桜美林学園 町田キャンパス 太平館にて
日 時 : 8月7日(土)、正午から
アクセス : JR淵野辺からタクシー7分
      JR淵野辺駅発→学園行き「桜美林 スクールバス」11:00、11:30、12:00  
小田急線、京王線多摩センター→学園行き「桜美林 スクールバス」11:30
お問い合わせ先:桜美林学園 電話:042-797-2661
尚、当日会が終了次第、キャンパスからスクールバス にて、ご希望の皆様を町田国際版画美術館へご案内する予定です。





こんな最果てのブログにわざわざご連絡下さいまして本当にありがとうございます。
自分も行きたかったのですが、仕事の都合で残念ですが出席できません。

なので、弔いの気持ちとして町田市国際版画美術館を先日再訪させていただきました。


















真上の写真に写っている「空気うけ」という作品は、丸・三角・四角に切り取られた紙が壁に貼付けられていて、その紙が周りの空気の流れの影響を受けてフッと揺れ動く作品です。

前回来たときもいいなあと思った作品ですが、こういう形で改めて鑑賞すると、壁に貼付けられたモノクロの紙の繊細な動きと、中里さんの死が重ね合わさるような気がしてしまい、思わず涙ぐんでしまいました。


自分は中里さんをひと月前に知ったばかりなのでわかったようなことを言える立場じゃないです。
でも先日初めて中里さんの作品をみたとき、自分の心のなかのモヤモヤしたものがスッ抜けていくような感覚を覚えました。

個人的に最近の日本の現代美術にちょっと食傷気味で疲れていました。
まず言葉ありき、戦略ありき、の世界で確かにそれは重要なことかもしれないけれど、ちょっとみんな語りすぎで頭がパンクしそうで。

中里さんの力強い作品は、そういった迷いを吹き飛ばしてくれました。
好きにやれ、続けろ……。
自分はそんなことを中里さんの作品から感じたわけです。
「上手い」とか「面白い」を越え、生きるための力を与えてくれる作品です。やっぱりこういうものがアートかもしれない。


8月8日で展覧会は終わってしまいますが、足を運べる方はぜひともご覧ください。




安らかにお眠りください……。