受験対策

【講評】オリンピックエンブレム

紆余曲折あった2020年東京オリンピックのエンブレムですが、8日に最終候補である4作品が出揃いました。

インターネットの人々は今更といわんばかりに、数ヶ月前のエンブレム狂想曲が嘘かのように落ち着いた反応を見せています。ただ、先日急逝してしまったザハ・ハディドの国立競技場問題も含めて未だ火は燻っており、2020年を迎える前に今後もまたどこかでこのような問題が噴出し、炎上しても驚くことではないでしょう。

しかし、それにしても、いまだかつて日本国民がデザインについてこれほどまでに議論したことはあったのでしょうか。

デザインを勉強している若い人にとっては、今回の騒動で明らかになった専門外の人々とのデザインに対する意識の差、そして一部の根拠のない誹謗中傷ともいえる言動に心を痛めたこともあったかと思いますし、日本という国そのものに絶望してしまった方もいるかと思います。

ネガティブに考えればきりがないけれども、しかしこれまでブラックボックス状態で不透明だった日本のデザイン業界にわずかながら穴が開いたことは事実であり、ポジティヴに考えるとするならば、もしかしたらここが日本のデザインの再スタートになるかもしれません。

と、前置きが長くなってしまいましたが、今回のブログ記事は別にそんな内容に触れるわけではありません。今回は祝・最終候補発表ということで、〈もしも美術予備校で「TOKYO2020 オリンピックエンブレムを考えなさい」という課題が出題されたら〉というテーマで、この最終候補である4作品が、美術予備校の講師からどのように講評されるかシミュレートしてみたいと思います。美術予備校の経験者はいま、この候補作品4枚があのおぞましき講評台に乗せられて、偉いのかなんなのかよくわからないけれど偉そうにはしている予備校講師が目の前に立っている状況を想像してください。

ここでいう予備校講師とは私の経験から作り上げられた架空上の予備校講師ですので、以下に述べられていることは私自身の意見を100%反映したものではありません。また、これを読んでいるあなたがたの知っている予備校講師とは違ったことを言っている可能性は大いにあるので、受験生は鵜呑みにしないでください

そして私はもう予備校講師でもなければ、デザイナーの経験もない素人ですので、これは単なる余興です。マジレスとかやめてください。炎上したくないんです。



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A. 組市松紋(くみいちまつもん)
歴史的に世界中で愛され、日本では江戸時代に「市松模様(いちまつもよう)」として広まったチェッカーデザインを、日本の伝統色である藍色で、粋な日本らしさを描いた。
形の異なる3種類の四角形を組み合わせ、国や文化・思想などの違いを示す。違いはあってもそれらを超えてつながり合うデザインに、「多様性と調和」のメッセージを込め、オリンピック・パラリンピックが多様性を認め合い、つながる世界を目指す場であることを表した。


*講師コメント
今回の4つの中ではいちばん抽象的に見えるかな。コンセプトには市松模様って書いてあるけど、でもこれオリンピックのほうは鞠(まり)で、パラリンピックほうは扇…いや梅のつぼみかな?とか、なにか具象的なモチーフでも意識してんの(笑)?

まあ、それはちょっとわからないからおいといて、日本=赤、っていうティピカルな落とし込み方をせずに、あえて藍色に絞ったところなんかは、他と差別化できてて目立つ作品になってると思うよ。直線のみで構成してて、コントラストも強いし、目立つは目立つよね。法被(はっぴ)とか手ぬぐいに印刷したらおみやげとかで外人に売れそう。僕は買わないけど(笑)。

でもちょっと色面分割が細かい気がするかな。縮小したら潰れちゃわない?色面の大きさが単調だよね。それぞれの色面をもっと大きくしたり、変化をつけたりするといいと思うよ。まあ、僕、毎回講評で言ってるはずだけどね、それ。

コンセプトにある、形の違いで国や文化の違い云々ってくだりは理解できるけど、後付けっぽくも聞こえるかな。でも、見た目はユニークで面白いよ(笑)。万人受けはしないかもだけど、4つの中で唯一直線的かつ抽象度合いが強いぶん、他の3つが感覚的に合わない人はこれを選ぶしかないだろうね。なかなか攻めてていいと思うから、まぁこの調子で頑張って。



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B. つなぐ輪、広がる和(つなぐわ、ひろがるわ)
選手の躍動と観客の喜びがつながってひとつの”輪”となり、世界に広がってゆく平和や調和の”和”を表現した。
肉体と精神のたくましさ、躍動感・スピード感を込めたデザインにより、「自己ベスト」を目指すアスリートの素晴らしい活躍が世界に与える感動を表す。 さらには、2020年に日本がお迎えする世界の人々への敬意とおもてなしの心を伝える。


*講師コメント
まずさ、コンセプト前半で”躍動感・スピード感を込めたデザイン”って宣言しておいて、最後に”世界の人々への敬意とおもてなしの心を伝える”って、いろいろ伝えたいのはわかるけど、ちょっと欲張りすぎじゃない(笑)?

“日本がお迎えする世界の人々への敬意とおもてなしの心を伝える”って、このデザインのどこらへんに現れてて、どうやって伝えてるんだろう(笑)。ちょっと僕にはわからないかな(笑)。

まあ、それは冗談として。正直、4つの中じゃ見た目もコンセプトもいちばん「それっぽく」出来てるんだよね、これ。パッと見も、適度に具象的で、適度に抽象的で。色もいかにもオリンピックって感じだし、役人受けしそうな気はするね。強烈に人を惹きつけるような尖った個性やインパクト、日本の未来を感じさせる革新性みたいなものはないんだけど、よくまとまってると思うよ。それはつまり無難ってことでもあるんだけど、試験だったらそれなりの評価は与えられる作品だろうね。

それっぽくできてるから、10秒で決めろって言ったらコレを選ぶ人は多いかもね。ただやっぱり時間をかけてみるとつまらないデザインにも思えてくるかな。エンブレムとしてではなく、本当に好きな作品に1票入れろって言われたら、自分はこれには入れないかなあ。

だってよく見るとオリンピックのほうの人のカタチとかちょっとダサ…そのまますぎない(笑)?吸い込まれてるの?吹き飛ばされてるの?みたいな(笑)。かと思えばパラリンピックは風のような、ゴールテープのような形じゃん。ふたつ並べたときの共通性が弱いんじゃないかなー。ま、全体的な完成度は高いからこの調子で頑張って。




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C. 超える人(こえるひと)
俵屋宗達(たわらやそうたつ)の風神雷神図(ふうじんらいじんず)や浅草雷門(風神雷神門)など、古くから日本人に愛されてきた風神・雷神をモチーフに、ゴールテープを切る一瞬の躍動感や、「自己ベスト」を目指し、超えようとする選手たちの姿勢を描いたデザイン。雷神の太鼓を花火に、風神の風袋を虹にたとえ、平和、多様性、調和への思いを込めた。
アスリートの強靭な心身による平和への継続的な貢献をエンブレムに託し、未来へつなげる。


*講師コメント
これね、パッと見はなんなのかよくわからなかった。だからスルーしたんだよね、初見は。色も地味で目立たなかったし。でも改めてコンセプト読んだら、そっか、って。コンセプトの文章も合わせるとデザインの整合性はとれてて、やりたいことはきちんと伝わってくるんだよね。

カタチや色選びなんかは知ってるなって思わされる。風神雷神図をよくここまで抽象化したな、とかさ。あと、色でいえばグラデーションを使わずに、ベタの色面だけで見せようとしてるところなんかも少なからず経験者だなって気がするんだよね。まあ、この結構大きな面積で使われてる黄土色?金色?は好みがわかれそうだけどね。

それにしても宗達…琳派から田中一光にまで通づる、美術やデザインを好きな人が好きそうなネタをま〜たよく持ってきたよね〜(笑)。いや、そういうのすごくいいと思うよ、よく勉強してる感じがして(笑)。

でも風神雷神かぁ。風神雷神図を実際見たことある日本人ってどのくらいいるんだろ?日本人にとって風神雷神図って風邪薬の改源でしょ。

それに外国人はどう思うんだろうね。たとえばシンガポール五輪が行われるとして「マーライオンの強そうなところと勢い良く水を吹き出すところをモチーフにしました!」っていわれても僕らにはピンとこないし「別にマーライオンじゃなくても良くね?」って思わない?つまり自国の有名な文化財をその国の人がモチーフにすると、なんだか媚びてていやらしいというかさ。それだったら未来を感じさせるようなもっと攻めたデザインを見せてくれたほうが、その国の姿勢を感じることができるのかなぁ、とかね。

だからコンセプトもわかるし造形的にも上手…なんだけどスポーツの祭典としての華やかさが伝わってこないし、モチーフも含めてちょっとマニア好みの感じもしてしまうかなぁ。やりたいことはすごく伝わってくるんだけどね。まあ、でもコンセプトを考えるのは得意そうだからこの調子で頑張って。




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D. 晴れやかな顔、花咲く(はれやかなかお、はなさく)
「自己ベスト」を尽くすアスリートと、彼らをたたえる人々の晴れやかな表情。その感情の動きを、空に向いて開花する朝顔(英語名:morning glory)に重ねた。朝顔の種が芽を出し、蔓を伸ばして花を開き、再び実を結ぶ成長の過程が、大会への期待感や次世代への継承を示している。
江戸時代に流行し、子どもから大人まで広く親しまれてきたこの花が、2020年への気持ちを高め、世界から訪れる観客を日本中でお迎えする。


*講師コメント
誰がどう見ても朝顔だよね(笑)。
世界的に朝顔がどこまでポピュラーな植物なのかはわからないけど、コンセプトにもあるように子供からお年寄りまで伝わるだろうね。4つのなかでいちばん具象的だし、カタチに意味深なところがない。

このDは、Aと同様にスポーツのイメージというよりかは日本的なイメージを使ったエンブレムなんだけど、市松模様に比べると、朝顔という具象的な花を使っているぶん親しみやすいかな。花というモチーフ自体、前向きで優しい印象を受けるしね。江戸(=東京)だったり、次世代の継承を感じさせる朝顔というモチーフ選びも上手いと思うよ。

水色や紫といった朝顔の色は結果的に他のエンブレムとの差別化に繋がってるし、中央にああいった亀倉雄策的な形を持ってくるところも上手だなって思った。

いちばん最後っていうこともあってなんとなく褒めちゃってるんだけど、まあ、でも、こういうのが選ばれてしまっていいのかっていうのがあるよね。優しいっていうか弱そうっていうか。癒し系?ほんわかしてる。

これ、NHK朝の連続テレビ小説的世界観の、古き良き日本を忘れられない今の日本人の感覚ってのを体現してるデザインなんじゃないかな〜。勝負できてない。みんなに好かれそうなものを作ろうとして、結果的に世界に置いていかれるっていう日本の家電メーカーのパターンになる可能性もあるね。今回の4つのエンブレムでバトルロワイアルをやらせたら、いちばん最初に教室のなかでビートたけしに殺られそう(笑)。だからもっと次世代感のある、力強いデザインでもいい気がするな。んまぁ、人柄は良さそうだから頑張ってね。




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皆さんは4つの中だったらどれがいちばんオリンピックエンブレムにふさわしいと考えますか?スポーツの世界では絶対的なタイムを競う競技だけでなく、例えば新体操やフィギュアスケートといった、本来絶対的な基準がない美を競う競技までもが細かい採点基準が設定され、最終的な勝者が決まります。

デザインはどうでしょうか。少なくとも現在はそういった基準はなく、最終的には個々人の感覚と判断により決定されます。その絶対的な正解と勝者が決められない世界なのに、最終的にひとつだけ決めなければならないところがデザインの難しさでもあるのでしょう。

この記事自体に特に恣意的なものはなく、美術予備校の講師の性格がいかに悪く、上から目線で、口だけは立派かということを理解していただければ幸いです。冗談です。一般的な美術予備校の講師のみなさんはもっと責任感を持ったうえで、きちんとした仕事をされています(遅すぎるフォロー)。

でもひと昔前の美術予備校は割とこんなんだったかも…。
では。

受験生向け「アニメーション」

このあいだ仕事で学生に「各自でこれ調べておくといいですよ」的なプリントを配って、そのなかにおまけ程度で書いておいたyoutudeで見られる短編アニメーションをここにリンクで貼っておきます。この分野に関してはたんなる素人です。かなり有名な作品ばかりなのでむしろ恥ずかしいのですが…まあ受験生向けということで許してくださいね。

ちなみに「受験生に見せるのでいい感じのアニメ教えてください!」ってtwitterで呼びかけたらひとりだけリプライをいただくことができたんですが、梅ラボさんはダイレクトメッセージで彼の映像リンク集のURLを送ってきてくれました。ありがたや。というわけでいくつか反映させてもらいました。





最近は大学でアニメーションがやりたいっていう受験生も多いので、イメージしやすいように学生作品から。

「アニマルダンス」



絞った色使いがグラフィカル。
作者の大川原さんは多摩美グラフィックデザイン学科卒で東京藝術大学大学院在学だそうです。
(古い情報だったらごめんなさい)




「向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった」



いまっぽい絵柄が高校生のハートをキャッチしそうです。
作者の植草航さんは東京工芸大学アニメーション学科卒業。





「おはなしの花」



東京工芸大学の学生だった久保亜美香さんと、多摩美グラフィックデザイン学科の学生だった井上精太さんの共同作品。





「オオカミとブタ」(オオカミはブタを食べようと思った。)



一時期ニコニコ動画で話題になりましたね。
竹内泰人さんは九州芸術工科大学(現・九州大学)在学中に制作を開始したんだとか。
(コピペ情報)





「Out of Sight」



台湾の学生作品。
すごいな〜。





「フミコの告白」



メディア芸術祭でもひときわ人気でしたね。
作者の石田祐康さんは美術科の高校を卒業していて、京都精華大学マンガ学部アニメーション学科だったらしいです。

こっちが卒業制作の「rain town」、ちょっと違うテイストですね。







ここからちょっとアートよりで。
「Trembled Blossoms」



PRADAのアニメーション。シャレオツ。





「Superflat Monogram」



ファッションつながりで言わずと知れたルイヴィトンのアニメ。
たぶん高校生には村上隆よりも細田守っていったほうがなじみ深い。
これをみてサマーウォーズの冒頭シーンとか観ると胸熱。







「Kanye West – Good Morning」



で、ついでに村上隆つながりでカニエウエストのPV。





最後は王道ですが手塚治虫の「jumping」で。



大学の4年間で2回〜3回くらいは授業でみさせられた気がする。
でも昔の作品なのに何度みてもすごいよね。
いま流行のループもののアニメだ。





どこからどこまで貼るべきか迷う。
ほかにもオススメで面白いのあったら教えてください。