美大受験なう

美大受験なう5

前回は東京工芸大学のことを書きました。
補足としてもうひとつ自分が個人的に注目している大学のことを書いておきます。
それは横浜美術大学です。

2010年度にこれまでの横浜美術短期大学から、新たに横浜美術大学として四年制大学として開校した大学です。
横浜美術短期大学のときは短期大学だったので、あまり受験生からは注目されていなかった印象です。
もし短大なら、女子の場合は女子美術短期大学があります。立地条件を考えないのであれば、女子美のほうが四年制への編入も可能ですしメリットがあるような気がしていました。男子の場合は、もしデザイン系ならば桑沢デザイン研究所に進学するのがより良い選択であった気がします。なので横浜美術大学が短大だったときは、正直、選択するメリットや必然性が薄かった気がします。

それが四年制の美術大学になったことで、受験者からすこしずつ注目され始めています。
学生や保護者の方からも「横浜美術大学ってどうですか?」という相談が若干増えています。

なにせ「美術系学部のある大学」ではなく、れっきとした関東にある「四年制の美術大学」です。
率直に言って「横浜美術大学」というネーミングがうまくハマってると思います。
すごくわかりやすいですし、イメージが良いですよね。「横浜」という地名からうける印象がすごくいい。
実際の最寄り駅は青葉台なので横浜から40分かかるらしく「横…浜…?」という立地なのですが。

あとは、東京造形大学や女子美術大学に比べて新しい感じがしますよね。手垢がついていない。
自分が入学した多摩美術大学の情報デザイン学科というところもそうだったのですが、ブランドイメージもなにもないところに新しいものを感じてあえて入学してくる人のなかには面白い人たちが必ずいます。まだ実績がないというところに、むしろこれからを期待させます。


個人的に注目している理由としては、まず教授陣が頑張っていることが伝わってくるからです。
大学側が予備校に足を運び、広報活動や美大受験に関しての情報収集をきちんとされている印象です。
教授たちがより良い学校にするために頑張っている大学は伸びると思います。

それと特待生制度として1年時授業料全額(5名)または半額免除(10名)という制度があること。
このご時世、まるまる1年分の授業料(おそらく110万円)が免除になるのは学生にとっては注目すべきことではないでしょうか。
2年目以降も奨学生制度として4分の1〜全額免除の制度があるようです。
金銭的に苦しいけれど美大に進学したいという場合、実技が優秀かつ多摩美や武蔵美にこだわらないのであれば、この制度を利用するのもありかもしれません。ちなみに年間の学費は多摩美と比べると20万円ほど安いようです。

それでいて、現段階では非常に入学しやすい。
多摩美や武蔵美でさえ合格しやすくなっている昨今ですから、ある程度予備校などで実技を練習した学生はほぼ確実に合格する印象を個人的には持っています。入学しやすいということは、誰でも入学できる可能性があるゆえ、当然学生の意識の差にムラがあるということでもあるのですが、自分が見ている限りでは、推薦制度でなかなか資質のある学生が入学しています。

その学生たちは浪人は避けたいだとか、学費のことだとか、勉強の学科試験に対する不安などで横浜美術大学を受験したのですが、実技に関しては多摩美や武蔵美も合格圏内だったと思いますね。そういう現状をみていると、この先横浜美術大学はどうなるのかなあと気になります。

2012年度の資料をみると、全学部合計190名の定員中、115名は推薦またはAO枠です。推薦は指定校推薦、公募推薦、自己推薦の3種類。AOは8月と10月の2回。一般試験は前期と後期の2回。受験のチャンスが多いですね。



前回と今回、東京工芸大学や横浜美術大学のことを書きましたが、予備校講師的にはあくまで多摩美や武蔵美を薦めます。
なんだかんだで、日本は大学名によるヒエラルキーは現状存在します。
努力する人や才能がある人は学校なんてどこでもいいんです。どこいったって才覚を表しますから。そこそこの努力でそこそこ就職したりそこそこ生きていきたいって人にこそ、大学は重要なのだと思います。

いま多摩美や武蔵美も入学しやすくなってますからね。
昔のイメージで「多摩美や武蔵美は難しい」と思っている保護者のかたや受験生は多く、ネガティブな理由(多摩美や武蔵美なんか合格できるわけがない!)という理由で最初から志望校のレベルを下げるパターンも多いんです。それはとても勿体ないです。

美大受験なう4

いまのところこのシリーズは推敲せずに、書きなぐりに近い状態でアップしています。
データを出さないので印象論が多いかもしれません。それにぶつ切りのように終わったりします。
でも、あまり考えすぎると手が止まってしまうので…。

いちおう書きたいこと全部書いたら、その後きちんとまとめたいとは思っているのですが。





さいきん高校生に人気が出てきている大学といえば、東京工芸大学でしょうか。
自分が受験指導をしている範囲ですと受験者総数では急増とまではいきませんが、東京工芸大学に興味を持っている学生は確実に増えています。特にこの3年ほどのあいだに増えてきている印象です。

10年ほど前、自分が受験していたころは写真学科の評判が良かったと思います。
現在人気があるのはマンガ学科やアニメ学科です。
昨年度の受験資料をみると、工芸大学はAO、自己推薦、公募推薦、一般前期・一般後期と入試制度が豊富だからか一般入試における受験倍率はそこまで高くありませんが、マンガ学科などは油断していると危ないですね。デザイン系学科なら求められる実技レベルの把握はできますが、マンガ・アニメ・ゲームとなるとまた違った見方が求められます。自分はいままでマンガ学科の受験を志望する学生を数人指導したことがありますが「ちゃんと対策しないと不合格の可能性がある学科」という認識ですね。

日本の場合、10代の若い人が美術大学・美術学部などを目指すことになるきっかけはマンガやアニメやゲーム、そういったものに使用されているテイストのイラストから受ける原体験が強いと思います。なので、若い人がマンガやアニメやゲームを作る仕事に将来携わりたいと思うのは当然のことでしょう。

これまではそういった分野を勉強したければ専門学校というイメージがありました。
でも、このご時世やはり大学は出ておきたいという気持ちもある。
アニメ・マンガ・ゲームを勉強したいというところと、大学を出ておきたいというところで、京工芸大学はそのような時代のニーズと噛み合って、ちょうどそういう層を上手く掬った。すなわち、これまでその分野で専門学校に進学していた層の一部を大学に取り込むことができた。

とはいえ受験生の保護者や受験生自身から「大学でアニメやマンガを勉強してどうする」「どうせならデザイン学科を卒業していたほうが就職できる」という声は根強いです。

ちなみにpixiv発でネットで話題になった「T京K芸大学マンガ学科一期生による大学四年間をマンガで棒に振る」は自分が接している高校生でもチェック済みの学生が多かったです。
特にマンガ学科に進学を希望していた高校生はあれを読んでいろいろ考えたようですが、むしろ大学に行ったところでそう簡単にマンガが描けるようになるわけがないという現実を直視することできて良かったのではないでしょうか。

結果的にあの漫画が公表されたことは意味があるような気がします。
あの漫画を読んだ上で進学してくる学生はそれなりに決心してきてると思いますからね。

美大受験なう3

気がついたら前回更新から3ヶ月だよ!
ドメインにもプロバイダにもお金払ってるのに!

いやはや、ワードプレスいじろうとして上手くいかなかったから腐ってみたり、仕事が始まってみるとなかなか両立できなかったり、アニメ観ることを優先してみたり、言い訳ばかりです。

今日から1週間ほど仕事が休みなので、ちょっとこの数ヶ月のことを振り返りつつこまめに更新したいと思います。
とりあえず今回は書きかけの「美術受験なう」の続き。推薦試験の話です。
2行ほど書いて3ヶ月放置しておりました。



数年前まで関東の私立美大は多摩美・武蔵野美大が本命大学として人気でした。
東京造形大、女子美大、日大が第1希望という受験生もいたとは思うのですが、少なくとも東京の予備校では第2志望以降に受験する人が多かったと思います。

それが最近は東京造形大や女子美、日大を第1志望にする学生が多いです。
特に現役生に人気があります。それは推薦受験が盛んだからです。
学校推薦、AO試験、公募推薦、自己推薦、学校によって少々名前や内容が異なりますが、上記の3校については2種類以上の推薦制度があります。さらにはⅠ期・Ⅱ期・Ⅲ期…と同じ推薦試験を何度か行う大学もあります。

多摩美や武蔵野美大はそこまで推薦制度が活発ではありません。
一般試験で不合格や浪人のリスクを背負うより、より合格がし易く、結果も早く出る推薦入試が、現役主義の強まっている昨今注目されています。

私立美大の試験においては実技だけではなく学科の点数も重要になってくるのですが、美大入試において勉強に不安がある場合も推薦入試は有効な選択肢となります。それは多くの場合、推薦試験で学科試験が課されないからです。
「ぜったい現役で合格したいけど学科も実技もちょっと不安かも…」という場合、とにかくやる気と熱意があれば推薦試験は合格する可能性があります。

また、性格が繊細な人にも推薦入試は向いていますね。
美大を目指す人が全員が受験競争のプレッシャーに耐えられるほどの強い心を持っているとも限りません。競争という環境に馴染めない人にとっても推薦受験は助け舟になります。実技一発勝負ではなく、普段の作品や人となりを見てくれるので。
あまり軽々しく印象論を語ってはいけないとは思いますが、最近は昔よりも繊細な子が多くなっているのではないのでしょうか。

たとえば造形大学や女子美術大学にとって、自分の大学を第1志望として受験してくれる推薦試験の受験者は、むしろ第2志望や第3志望で不本意ながら進学してくる一般試験の受験者よりも魅力的かもしれません。それに受験者数の減少する現在、早期に入学者を確定できることも大学側にとっては大きなメリットでしょう。


ちなみに武蔵野美大はさいきん推薦に力を入れ始めてるようですが、まだまだ渋々やっている感があります。よほど面白い人材がいるなら採りたいのでしょうが、やはり現在は一般試験を重要視しているなという印象です。

空間演出デザイン科や基礎デザイン学科など推薦制度がありますが、一般試験で受験した方が簡単なんじゃないかと思います(あくまで私見です)。武蔵野美大の推薦はポートフォリオを用意しなければならないし、将来に対してはっきりと答えられるくらいの明確な意思が必要になります。

そのくらい意思のしっかりした人なら推薦じゃなくても一般試験でも合格できるだろうという気がするので、現段階では武蔵野美大を推薦で受験するメリットはあまり感じられません。受かるかどうかわからない試験のためにポートフォリオをつくるのなら、そのぶん一般受験用に実技を練習した方が合格に近づきますし、他大学の受験も見据えて潰しがきくのでは、という私見です。(ほんとに、あくまで私見ですよ。)

武蔵野美大の推薦試験は現段階では早期の人材確保が目的ではなさそうです。
普段よほど面白い作品の制作や活動・経歴があれば話は別ですが、付け焼き刃で受験してもなかなか難しいと思います。

美大受験なう2

前回は不況と少子化により受験者が減り、そして家庭の経済状況から浪人を避ける傾向にあるということを書きました。

受験者が減るととうぜん大学は合格しやすくなります。
いわゆる5美大といわれる武蔵野美大、多摩美大、造形大学、女子美、日大藝術学部は、大学により多少の違いはありますが、この10年で受験者数はおよそ半分になりました。

しかし反比例して、逆に10年前よりも合格定員は増えている学科があります。10年以上前ですが、情報デザイン学科のように新設された学科もあります。私立美大全体で受験者数が減って合格定員が増えている…ということで、現状かなり合格しやすくなっています。

私立美大は大学とはいえ主な収入源は学生からの学費ですから、定員を増やすことはあっても減らすことはそうそうできることではありません。

現場レベルでみると、5美大のなかでも女子美大、造形大学、日大は推薦入試であれば合格しやすくなっている印象があります。3年くらい前までは推薦入試でも不合格の学生がわりといていたのですが、昨年あたりからは講師の目からみて「ちょっと危ないかも……?」と思っていても合格するケースが多々見受けられました。

一般的には5美大のなかでは多摩美と武蔵野美大の人気が高いので、その2校が入学し易くなると、その他の大学には人が集まりにくくなります。
なので多摩美大・武蔵野美大よりも受験者数の少ないそれらの大学は、推薦受験に力をいれてきています。早期に入学者を確定させて、人材確保をするためです。

推薦受験をする受験生はやる気があり、その大学に本当に行きたいと思っている人が多いです。また、美術予備校慣れしていない、素直な学生が受験するので大学にとってもメリットがあるのだと思います。

美大受験なう1

私は大学院では自身の予備校で3浪した経験、それと予備校講師としての経験から、美術教育と美術予備校について調べていました。

修士1年生のときの進級時の研究レポートで「美術予備校は5年後は残っているが10年後はわからない」というようなことを書きました。今年はそれから4年目になります。美術受験の現在の状況はどうなっているでしょうか?



まず、いわずもがな受験者数が減っています。
私立美大も私立美術大学も、毎年1~2割のペースで受験者数が減少しています。原因としては少子化と不況が考えられます。10年前と比べると、日本人の平均所得は100〜200万円減少してるといわれますから、この時代に予備校に通って私立の美大に進学できるのは恵まれているかもしれません。

ここ数年で、予備校で学生と話をすると、経済的な事情から受験校を変更したり、浪人は絶対にできないから第一希望でなくても現役で合格したところに進学するというケースは増えています。
むしろ今はそれがスタンダードな選択かもしれません。少なくとも自分が学生講師を始めた6〜7年ほど前は、金銭的事情を口にする学生はまだそれほど多くはなかった印象です。
ここ3年ほどで現役進学主義はかなり強まってきている印象です。

都内の比較的大手の美術予備校に通っている学生は、すでに予備校の授業料を支払っているということになりますから、その時点でいちおう美大受験にエントリーはしているわけです。
しかし公立高校の美術科で指導をしていますと、経済的な理由で美術予備校に通うことはもちろん、美術大学受験も断念せざるを得ないケースというのは多々あります。

奨学金制度などを利用すれば進学できないこともない…とは思いますが、”なんとなく美大”程度の覚悟では進学できません。
以前は「なんとなく美術やデザインに興味があって→予備校に通ってみて→浪人してだんだん本気になっていく」みたいなところもあったように思います。おそらくいまの高校生は、自分たちの頃よりもシビアに将来を見据えてるようにも思います。(それが良いか悪いかは別として)

いま予備校で指導していて、自分たちの頃のように「どうしようもない人」たちはほとんどいないな、という印象です。みんなとても真面目で最初から絵がそれなりに上手いです。壊滅的にデッサンが上達しなかったり、予備校をさぼってフラフラしてるような学生はこの数年はほとんどみたことがありません。女の子が多いことも関係あるかもしれないです。
なんにせよ、この時代に美大に行こうとする人たちですから、中途半端な気持ちの人は少ないということなのでしょう。

さて、4月からは新たな年度が始まるわけですが、受験が終わって新たな年度が始まろうと震災の影響もあり、今年はこれまで以上に美大受験者が減少することが予測されます。

果たしてこのさき美大受験はどうなっていくのでしょうか?
個人の予測を書いてみたいと思います。



(続く。)
(このブログの続くは続かないケースも多々ある)
(でもさすがに続けなきゃまずい。)
(この記事は個人の主観と経験と予測、判断で書いています。決して正確な現状を説明していないかもしれません。こういう見方もあるのか、という程度で読んでもらえればと思います。)